
今ハドソン川の48丁目には、イントラピッドと並んで海軍の新しい強襲揚陸艦「ニューヨーク」が、静かに今週末の正式就役を待っている。この船は、9/11で崩壊した世界貿易センタービルの焼け残った鉄骨7.5トンを使って船首部分が作られている。紋章も、ツインタワーの絵柄や「Never Forget」の文字をあしらったもので、2日に初めてNY入りした時には、グラウンド・ゼロの近くで一時停止し、21発の空砲をならして犠牲者に弔意を表した。
9/11の後「ニューヨーク」という名前の船を復活させてほしいと海軍に要請したのは、当時のパタキNY州知事だった。現在海軍では州の名前を付けるのは潜水艦というのが一般的となっているが、それを知りつつも、あえて潜水艦ではなくより多くの人が目にする海上を走る戦艦に命名して欲しいと頼んだ。この異例のリクエストは受け入れられ、9/11の約1年後に発表式典が行なわれている。
でき上がったばかりでまだ任務にもついていない船は、美しく、傷一つない。WTCが溶かし込まれていると思えば、感慨もひとしおだ。ただ、あのビルが軍艦の一部になってしまったということには、個人的にかなりの抵抗を感じる。あのビルの残骸は、できれば戦いではなく、平和を象徴する何か、希望や自由を象徴する何かに、使って欲しかった。テロの後1年ほど続いたNYの異常な雰囲気、いいたいことも気軽にいえないような戦時ムードともいえる実にイヤな空気感を思い出すにつけ、忘れるべきでないのは、攻撃され戦いを挑まれたことより、あたりまえの自由な生活の尊さなのではないかと、つくづく思う。



